消防車や救急車が行き交う騒然とした現場では、車両の中に閉じこめられた娘と携帯電話でやりとりしながら救出を待つ母親の姿が見られた。
「お母さんの姿、ここから見えるわ。助けて」。現場近くにいた無職アリス・ミラーさん(68)は、携帯電話から聞こえる娘の公務員カレンさん(46)の言葉が信じられなかった。娘とは最寄り駅で落ち合うはずだったが、約150メートル先の線路上には無残に壊れた地下鉄の車両が横たわっていた。車両の中に閉じこめられたカレンさんと孫のコリーさん(25)が、窓の外にアリスさんを確認し、電話で助けを求めたのだ。
「もう少し我慢して。今に助かるから」。アリスさんは、携帯電話を握りしめ、今にも泣き出しそうな顔で、脱線した車両を心配そうに眺めた。約30分後、カレンさんは消防隊員らに救出され病院に搬送された。無事を携帯電話で確認すると、ようやくほっとした表情を浮かべた。
現場は、ワシントン中心部から車で約30分。現場近くに住むビアンカ・スミスさん(17)は、近くを自動車で通っていて、大きな音とともに地面が揺れるような衝撃を感じた。線路の方を見ると、車両の中から体中がほこりで汚れたけが人の乗客7人ほどが自力ではい出してくるのを目撃した。救急隊員は、衝突の勢いで前の列車に乗り上げた車両にはしごをかけてドアをこじ開け、閉じこめられた乗客を救出した。
警察当局は、負傷者の捜索・救出を優先するため市民らに現場に近づかぬよう呼びかけたが、アリスさんのように、家族が乗っていないかどうか心配になり、日が暮れても現場を離れない住民の姿が目立った。
近所に住む無職エリナ・ハリソンさん(54)は「アメリカの中心でこんなことが起こるとは思わなかった」と声を震わせた。

